
「名誉や利益だけのために生きる人には『誠実さ』というものがない(意訳)」
江戸時代初期の禅僧である鈴木正三(しょうさん)の言葉です。
「名誉を得たい」という欲に心をとらわれると、人は平気で嘘をつくようになります。
「利益を得たい」という欲に、我を忘れてしまった人も同じです。
自分の名誉や利益を得るためには、他人をおとしいれたり、だましたり、汚い手を使っても、たとえ人を傷つけることがあっても平気です。
このような心の状態を、鈴木正三は「誠実さがない」とのべているのです。
では、誠実さを失った生き方を続けると、その人はどうなってしまうでしょう。
人のうらみを買い、敵を増やし、周囲の人たちからは悪口をいわれます。
苦境に立てば侮蔑(ぶべつ)され、孤立無援の中でもがき苦しむことになります。
仏教的ないい方をすれば、地獄の責め苦を味わいながら、生きていくことになるのです。
平気で嘘をつき、他人をおとしいれるような人は、身勝手な欲望に心をとらわれ、それが自分を苦しめることにも、気づくことができません。
競争社会に生きていれば、名誉や利益を得ることは、ひとつの目標にはなりますが、同時に「誠実」に生きることを忘れてはいけません。
こうした欲望にとらわれた人に、心を乱されることがあっても、自分が正直に生きてさえいれば、心の平穏はかならず取り戻せます。
《欲にかられた人は、平気で他人を傷つけます。こうした不誠実な人に心を乱されても自分は誠実に生きていくことが肝心です》
『心を整える9つの習慣』
植西聡 著
永岡書店
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