
《外部の人に自分の仕事のおもしろさが伝わらなければ、それはつまらない証拠》
夫婦には二通りあると、私は思っています。
一つは、夫が自分の仕事について妻にまったく話さないという関係。
もう一つは、職場の人間関係から取引内容まで、微に入り細をうがってペラペラしゃべる夫婦。
私は男性なので「夫が」としましたが、妻と夫を入れ替えてもいいでしょう。
これはもちろん、夫婦仲のバロメーターです。
普段まるで話をしていないと、いざというとき相談できなくなってしまいます。
リストラされそうになった、急な転勤を命じられたというとき、妻にそれを告げると、「じゃあ、辞めれば?」とあっさり結論を下されたり、「あっ、そう」と軽く流されたりします。
この仕事にどれだけ力を注いでいるか、自分は職場でどういう役割を果たしているか、転勤を命じられたこと自体より信頼していた上司に言われたことがショックだった、などというディテールは、毎日話をしていないと伝わりません。
悩みを打ち明けるには、共通の基盤が必要ですから、普段、仕事についてしゃべらないでいると人生についての相談もできないという状況まで引き起こす可能性があります。
仕事について話すか否かは、自分自身がどれだけ仕事をおもしろく思っているかのバロメーターでもあります。
まったく話さないという人に理由を尋ねると、決まって返ってくる答えがあります。
「言っても、どうせわからない」
しかし、言ってもわからない状態にした張本人は、その人自身です。
どんな業界にも、共通認識や専門用語があります。
同僚や同業者どうしなら、細かに説明しなくても、阿吽(あうん)の呼吸でわかりあえます。
ところが妻でも夫でも恋人でも、部外者に説明する際には、不可欠な要素がいくつかあります。
まず、自分の仕事がどういうものなのかを自分自身、理解していること。
次に、それをきちんと説明する言語能力。
さらに、利害関係がないプライベートな間柄の相手にも興味をもって聞いてもらえる、話のおもしろさ。
何より、自分自身「仕事がおもしろい」と思っていなければ、仕事を理解することも、おもしろく説明することもできません。
もし、仕事がおもしろくてたまらなければ、誰かに話したい、わかってもらいたいと思うはずです。
夫婦に限らず、部外者にどれだけおもしろく仕事の話ができるか試してみましょう。
《仕事のストーリーテラーを目指す》
『ラクをしないと成果は出ない』
日垣 隆 著
大和書房
![]() |