
西郷南州(西郷隆盛)は、「過ったと思ったら、一歩先に踏みだせ」と申しました。
人間はここがなくてはなりませぬ。
支那で昔、いなかの一少年が土焼き釜を買い、肩に乗せて還っておりましたが、つまづいたひょうしに肩の釜をうしろにとり落し、地響きたてて毀れ(こわれ)ました。
少年は見向きもせずに、さっさと歩いて還りました。
そのようすを最前から見ていた人が、これは見どころがある少年だと見て、学資を出し都へ修行にやりましたが、それが毀れた(こわれた)片を拾い集めたり、継ぎあわせたり、未練がましいことでありましょう。
これを死んだ子の年を数えると申します。
かかる人に立派な仕事のできたためしはありません。
過ったら、さらに進んでいっそう善いことをする、そこに進歩と光明とがあります。
_______
陽明学講話
山田 準 著
明徳出版社より
![]() |