田坂広志 言葉以外から伝わってくるメッセージ

表情 いいため話
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「ダブルバインド」という言葉を知っていますか?

「ダブルバインド」とは、文化人類学者のグレゴリー・ベイトソンが語った概念だが、分かりやすく言えば、「言葉が伝えてくるメッセージ」と「言葉以外から伝わってくるメッセージ」が相反しているため、それを受け取る人間が、その相反したメッセージの「板挟み」(ダブルバインド)になって悩む状況のことである。

例えば、母親が子供に対して「お前は良い子だね」と言うが、そのとき、母親の目が笑っておらず、冷たい雰囲気が伝わってくる状況などである。

これはベイトソンの概念を引用するまでもなく、日常の職場では、しばしば起こっている。

すなわち、誰かが何かを語ったとき、「言葉が伝えてくるメッセージ」と「言葉以外から伝わってくるメッセージ」が違っていると感じる状況、それは、我々が、日々の仕事において、しばしば経験することである。

(中略)

特に、「言葉以外から伝わってくるメッセージ」に最大の注意を払うべきであろう。

なぜなら、当然のことながら、相手の「真意」や「本音」は、ほとんどの場合、この「言葉以外から伝わってくるメッセージ」の中にあるからだ。

そして、我々が仕事を円滑に進めようと思うならば、何よりも、この相手の「真意」や「本音」を感じ取ることができなければならないからだ。

このように、我々が「仕事力」の根幹である「対話力」を学んでいくとき、「言葉のメッセージ」を交わす「表層対話力」と、「言葉以外のメッセージ」を交わす「深層対話力」の二つの「対話力」があるが、「表層対話力」は基本の能力であり、「深層対話力」こそが、高度な能力である。

それゆえ、一流のプロフェッショナルは、必ず、この「深層対話力」を身につけている。

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「仕事の技法」

田坂 広志 著

講談社現代新書より