伊那食品工業会長 会社とは何のためにあるのか?

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仕事 いいため話
引用:魂が震える話

「会社とは何のためにあるのか」「会社にとって成長とは何だろうか」と考え始めるようになったのは、入社して25年を過ぎた頃だと思います。

長い間考え続けて得た結論は、「会社は、社員を幸せにするためにある。そのことを通じて、いい会社を作り、地域や社会に貢献する」というものでした。

それを実現するためには、「永続する」ことが一番重要だと気が付きました。

会社が永続できなければ、どこかで社員の幸せを断ち切ることになってしまうからです。

二宮尊徳の言葉に「遠きをはかる者は富み 近くをはかる者は貧す」というものがあります。

25年ほど前になるでしょうか、「会社は永続することに価値がある」と考え始めた頃に、この言葉に出会いました。

私は、はたと気が付きました。

そうだ、会社を「いい会社」にして永続させるためには、「遠きをはかる」ことだ。

以来、「遠きをはかる」ことが、私の経営戦略となりました。

「遠きをはかる」は言うに易(やす)く、行うに難しです。

最近ではますます「遠きをはかる」ことが困難な状況になってきました。

会社は短期間で利益を上げることが、求められるようになったからです。

極端に言うと、「今が良ければ良い」「数字が良ければ良い」という経営がまかり通ってしまうことになります。

そこで思い出されるのが、アメリカの大手証券会社だったリーマン・ブラザーズの経営破綻です。

2008年9月、リーマン・ブラザーズは64兆円(当時の円換算で)もの負債を抱えて倒産しました。

つい数年前まで、サブプライム関連商品で莫大な利益を出し、経営者は10億円を越える報酬を手にし、社員でも年収3000万クラスはザラだったということでした。

その巨大証券が、突如として倒産したのです。

誰もが耳を疑ったことでしょう。

これなども、目先の利益におぼれて、「遠くをはかる」ことを怠った典型例だと思います。

今でも、テレビに映った、段ボール箱を抱えて社屋ビルから退去する社員の姿が甦(よみがえ)ります。

アメリカ型の資本主義、個人主義の行き着く先を見た気持ちでした。

アメリカ型の経営手法は、人を幸福にしないと感じます。

少なくとも、私の経営理念とは相容れないものです。

私は二宮尊徳の次の言葉を「経営戦略」の柱としてきました。

今なお少しも古びていません。

遠きをはかる者は富み

近くをはかる者は貧す

それ遠きをはかる者は百年のために

杉苗を植う

まして春まきて秋実る物においてをや

故に富有り

近くをはかる者は

春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず

唯眼前の利に迷うてまかずして取り

植えずして刈り取る事のみ眼につく

故に貧窮す

『リストラなしの「年輪経営」』

塚越寛 著

光文社