森信三語録

語録 いいため話
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【下座の経験】

人間下座の経験なきものは、未だ試験済みの人間とは言うを得ず。唯の三年でも下座の生活に堪え得し人ならば、ほぼ安心して事を委(まか)せうべし。

【生命の振幅】

人は生命の振幅広きがよし。坂上田村麻呂は怒れば鬼神も挫(くじ)き、笑えば三歳の童子もなつきしという。

【私と公】

私欲に基づく努力は、何時かは必ず行き詰るものなり、之に反し公の為にする場合は、真の行き詰りというものなし。

噴水は大いなる水源でありてこそ持続もすれ、自ら汲み上げるのでは、そのうち疲れを生じて中止になる他なきものなり。

【教室の空気】

水も洩らさぬていの学級経営をしている教室へは、一寸足の踏み込み難き感がするものなり。例えば机の端を揃えるだけでも、教室の空気は大いに引き締まるものなり。

【馬鹿になり切る】

人間真に打ちこめば、頭のよしあしは問題にならず。人間功を為す、必ずしも難からず。ただ馬鹿になってどこまでも続ければよし。ただ馬鹿になり切れる者世に少なきのみ。

【人生二度なし】

男一匹ズブリと頭まで水中に没して、馬鹿になって思い切り離れ業を演ずべし。人生は二度なきが故に。

【比較せずに】

すべて比較が迷いの根元なり。されば他人と自分を比較せぬがよし。比較するゆえ気がもめるなり。確固たる根を張るまでは、息のつづく限り水を潜って、他人の泳ぎ振りなど見ぬがよし。

【返事一つに】

返事の仕方一つにも、その人の人柄は現われるものなり。わずか一秒早くても、そそっかしやと言われ、これに反し一秒遅れても、不承々々の返事と思われるなり。

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森信三語録 下学雑話

森信三 著

致知出版社