新・生産性立国論

言葉 いいため話
画像:http://publicdomainq.net

日本がすでに人口減少のフェーズに入ってしまったことは、皆さんもご存じかと思います。

今後40余年をかけて、日本では15~64歳の生産年齢人口が約半数に激減します。

これは他の先進国のどこも経験したことのない、未知の世界に日本が突き進んでいることを意味します。

そもそも、戦後日本の目覚ましい経済発展の最大の要因は、人口が激増したことです。

日本経済はいまだに、この「人口の増加」を「経済の大前提」「社会の常識」としています。

しかし、その大前提が今、突き崩されようとしているのです。

その影響は甚大です。

2015年から2060年にかけて、日本の生産年齢人口は約3264万人減少します。

これは世界第5位のGDPを誇る英国の2017年末の就業者数(約3221万人)をも上回る、とてつもない規模なのです。

人口が減少しても、ロボットやAIを活用したり、移民を受け入れたりすれば何とかなると主張する人がいます。

しかし、この主張は明らかに日本の人口減少問題の深刻さを過小評価しています。

人口減少によって、今までの常識はすべて覆されます。

人口激増が可能にした寛容な社会も、曖昧な制度も、日本的資本主義も、すべて根底から崩れ去ります。

経済の常識も、企業と労働者の関係も、政治のあり方も、これまでとはまったく異なるものになるでしょう。

私がここまで自信をもって日本社会が激変すると断言するのは、確固たる根拠があるからです。

実は人類の歴史上、これからの日本と同じように比較的短い期間に人口が激減し、その結果、社会がガラッと様変わりしてしまった先例があります。

それは1348年以降、欧州で起きた黒死病、ペスト大流行の時代です。

ペストが流行した後、30年ほどで欧州では人口の約半数が亡くなりました。

その結果、欧州の社会は激変し、社会制度が根っこから崩壊しました。

650年以上も前のこととはいえ、この例は日本の未来を占う上で、きわめて多くの示唆に富んでいます。

何が起きたかを研究すると、今の日本の情勢と重なることが実にたくさんあることがわかります。

その変化は、大きく分けると、『人口への影響』『経済への影響…主力産業が「質的変化」』『「労働者の黄金時代」の到来』等々です。

「労働者の黄金時代」とは、労働力不足になったため、労働者の労働条件は劇的に改善しました。

それをもっとも顕著に示しているのが、収入の増加です。

人が減っても社会資本は減らないので、人々の可処分所得は劇的に増え、40年後には2.1倍に上昇しました。

女性も1.8倍と2.5倍に上昇しました。

しかし、物価は安定していました。

所得が増えたにもかかわらず、付加価値の高いものやサービスが売れるようになり、以前は贅沢品だったものが普通に買えるくらい、大幅に生活水準が上がりました。

ここには、今後の日本経済を理解するための、もっとも重要な示唆が含まれています。

ここでのポイントは、人口減少に直面した欧州の人々が、働き方を変え、産業構造を変え、資本家と労働者の関係まで変わるほど、必死で「生産性」を向上させてきたことです。

もしも彼らが変化を恐れ、それまでどおりの働き方に固執していたら、その後の繁栄がなかったことは明らかです。

人口減少時代に必要なのは、変化を受け入れ、むしろ変化を楽しみながら「生産性」を持続的に向上させていくことです。

経済の大前提が崩れ去った時代には、変化を恐れる姿勢は「座して死を待つ」以外の何物でもありません。

『新・生産性立国論』東洋経済新報社