三千マイルの挑戦

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サーフィン いいため話
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アメリカ南西部にあるカリフォルニア州サンディエゴ。太平洋に接する海岸に立ち、内陸側を眺めている自分を想像してほしい。

ここを起点として、大西洋に接するアメリカ北東部のメーン州まで三千マイル(約四千八百キロ)に及ぶウォーキングに挑戦するのである。

一日目、二十マイル(約三十二キロ)歩き、街中の喧騒から抜け出す。

二日目、二十マイル歩く。

三日目、再び二十マイル歩き、砂漠地帯に入る。ここは暑い。気温は摂氏三十八度以上だ。「テントの中で休憩したい」と思う。でも、気を取り直して立ち上がり、やはり二十マイル歩く。

一日二十マイルのペースを維持するわけだ。

あるとき、気候が変わって涼しくなる。追い風も吹いてさらに快適になる。「これならもっと速く歩ける」と思う。

だが、自制を働かせ、速く歩き過ぎないように調整する。いままで通り一日二十マイルのペースを維持する。

次はコロラド州の山岳地帯に入る。雪と風に見舞われ、気温も氷点下摂氏十八度を下回る。ひたすら「テントの中で温まりたい」と願う。でも、やはり気を取り直し、防寒着を着込む。そして二十マイル歩く。

要は、どんな状況下でも一日二十マイルのペースを維持するわけだ。山岳地帯を越えると大平原へ足を踏み入れることになる。

爽快な春を迎え、一日四十マイルでも五十マイルでも歩けそうだ。それでもペースを変えず、一日二十マイルに徹する。やがてメーン州に到着する。

ここで、別の人があなたと同じ日にサンディエゴに降り立ち、ウォーキングの旅に出たと想像してほしい。彼はこれからの旅に興奮して一日目に四十マイル歩く。

初日の四十マイルで疲労した彼は、摂氏三十八度の暑さに直面すると滅入ってしまう。「状況が良くなったらそのときに埋め合わせればいい」と考え、涼しくなるまでぶらぶらすることにする。

その後も同じパターンを繰り返す。状況が良いときには一気に歩き、悪いときには泣き言を言いながらテントの中で待機する。こうしてアメリカの西側を横断する。

コロラド州の山岳地帯へ入る直前のことだ。彼は素晴らしい天候に恵まれ、ペースを一気に上げた。それまでの遅れを取り戻そうとして、一日四十~五十マイルも歩く。

ところが、ペースを上げた反動で疲弊しきっていたところ、突如として猛烈な吹雪に遭遇する。これで死にそうな目に遭い、春が訪れるまでテントの中でうずくまる。

そしてようやく春が訪れる、彼は起き上がったものの、体力を落とし、メーン州を目指してつまずきながら歩く。彼が中西部のカンザスシティに入るころには、一日二十マイルを堅持していたあなたはすでにメーン州の先端に到着していた。

あなたは大差で勝利したわけだ。

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ビジョナリーカンパニー4

ジム・コリンズ / モートン・ハンセン 著

牧野 洋 訳

日経BP社