
社長の最大の仕事は「水先案内人」です。
会社をどうしたいのか。どんな方向を目指していくのか。将来、こんな会社に育てていきたい・・・。
こうした先々のビジョンが明確に示されなければ、社員はがんばるどころか、そのうち、社長についていこうという気も失ってしまうでしょう。
案内人である社長自身が揚げたビジョンを見失ったり、ブレたりしていれば社員は迷子同然、仕事をしていても右往左往するだけです。
これでは成果が上がらず、経営状態は悪くなることはあっても、よくなることはまず望めません。
いつの間にか、経営者自身がビジョンを見失ってしまう。
その最大の理由は、「目先のことに追われてばかり」いるからです。
たしかに経営者はものすごく忙しいものです。私自身に経営経験があるので、経営者がどれほど多忙であるかは、痛いくらいにわかっています。
でも、社長業に言い訳は通用しないのです。
では、起業したときよりもっといいビジネスを思いついた。
その場合も、事業を変えることは“ブレる”ことになるのだろうか、という疑問をもつ方もいるでしょう。
私はビジネスモデルを変えてはいけない、業態を変えてはいけないとはいっていません。
変えてはいけないのは企業理念であって、それに根差しているならば、何をどう展開しようとかまわないのです。
世界最高の起業家といわれるイーロン・マスクはまだ40代の若き経営者です。
現在までに、オンライン決済システムのペイパル、電気自動車のテスラ・モーターズ、宇宙事業のスペースX、太陽光エネルギー事業のソーラーシティなど複数の事業を次々立ち上げてきましたが、彼の理念は創業時から少しも揺らいでいません。
イーロン・マスクが揚げる企業理念は、「人類の未来の発展に貢献すること」。
彼が展開しているビジネスは一見、あれこれ手を出しているようですが、すべてが「人類の未来」という視点にフォーカスされていることに気づきます。
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社長の基本
三條 慶八 著
かんき出版
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