
作家の卵たちはよく、「アイデアはあるんですが、誰かがもう使ってしまったかもしれないと思うんです」と言います。
そうですね。たぶんそのアイデアはもうどこかで作品になっているでしょう。
ほとんどすべての創作上の試みは、すでに誰かによって手がつけられています。
でも、あなたの手ではありません。
シェイクスピアがその全生涯で書き上げた作品には、この世に存在するあらゆる種類の筋書きが使われているといいます。
それなのに、以後5世紀にわたって、作家たちは同じ筋書きを何度も繰り返し使って作品を書いてきました(しかも、それらの多くはシェイクスピアの時代よりずっと前からお決まりの筋書きとして存在していたものばかり)。
ピカソは、ラスコー洞窟の壁画を見てこう言ったそうです。
「われわれ人間は、1万2000年ものあいだ、何ひとつ学ばずにきてしまった」。
そう。きっと、その通りなのです。でも、だから何だというのでしょう?
(中略)
私は年を経るごとに、「オリジナルなもの」には心を動かされなくなってきました。
最近では、「本物であること」のほうにはるかにつよく感動します。
オリジナルであることを打ち出そうとすると、表面的で気取った感じになりやすいもの。
しかし本物の作品の静かな余韻は、いつでも感激をもたらしてくれるのです。
あなたのほんとうの気持ちだけを、真心を込めて表現してください。
どうしても分かち合いたい気持ちは、分かち合えばよいのです。
本物であるものは、それだけでオリジナリティを感じさせるものです。
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「夢中になる」ことからはじめよう。
エリザベス・ギルバート 著
神奈川夏子 訳
ディスカヴァー
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