
「岩尾の身とは、何事が起きても動かない、強く大きな心のことである。
武士だけではない。
農には農、商には商、工には工の、岩尾の身があるのだ」
たとえば———と、武蔵は言った。
農夫が丹精込めて植えた稲が、冷夏にやられ育たなかったとする。
このとき、ただ冷夏に当たった自分を哀れみ、嘆き悲しんでいるだけでは駄目なのだ。
なぜ、冷夏を事前に察知できなかったのか。
また、再度起こるかもしれない冷夏に対して、いかなる手立てが取れるのか。
そうしたことを考え、改めるべき点は改め、次の年へと繋げる。
これが農の岩尾の身である。
肝心なのは、どんなに受け入れがたいものであっても、それが事実であるならば、正しく認めること。
そのような強くて大きな心を養うことである。
これが出来て初めて、困難な問題に立ち向かう精神と、冷静で的確な対応が生まれるのだ。
引用:「宮本武蔵の『五輪書』が面白いほどわかる本」
細谷正充 著
中経出版より
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