
ニューヨークに住む日本人の友人が、書類の翻訳を頼んできたことがありました。
手伝うにはそれなりの覚悟がいる膨大な量です。
彼女がご家族の介護をしているのは知っていましたが、本当に困っているのだと思いました。
仕事を他人に頼むというのは、よほどの事情がなければしないことです。
勇気を振り絞って頼んでいるのだから、全面的に力になりたい。
手伝ってあげているという意識を捨てて、自分のこととして気持ちよく引き受ける・・・。
私は自分にそう念を押したので、作業のために徹夜になっても平気でした。
「あの人のせいで、こんなことをやるはめになった」と思うことなくできたから、お互いにとって最善の結果となったと思います。
もし私に「思ったより大変だった」とか「あなたのために無理をした」とか「手伝ってあげた」といった意識があったら、彼女は頼んだことを後悔し、人間関係にヒビが入ったかもしれません。
逆にいうと、「引き受ける余裕がない」という時、私ははっきりノーと言うと決めています。
「申し訳ないけれど、力になれない」と断るのです。
これは冷たいようですが、中途半端に手を出して途中でやめたり、ブツブツ不満を漏らしながら手伝ったりするより、お互いにとってはいいのではないでしょうか。
個人的な友人関係だと線引きが難しいことですが、ビジネスでは「フォローはゼロか100パーセント」と決めてしまうと、無駄に気を遣うこともなくなります。
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念のため思考
徳升笑子 著
マガジンハウス
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