
私は今まで本書のなかで、アメリカの重要な産業資本家に関して実施した調査について触れてきた。
彼らはアメリカでもさまざまな大産業を指揮する人物である。
しかしそのなかで、親から企業を受け継いだ者は十パーセントにすぎず、特別な教育を受けた人も十五パーセントしかいなかった。
このような状況から、繁栄の基礎となる性質を生み出してくれるのが、富や教育以外に存在しているということは明白である。
私たちは子供のために、自分を犠牲にして財産を蓄積しようとする。
ところが統計によると、子供のために財産を蓄積したほうが、子供の将来の暮らしは明らかに悪くなっていた。
統計が証明していることのひとつは、お金を残さないほうが、子供の暮らし向きはよくなっていくということなのである。
それは精神や身体の豊かさばかりでなく、財産それ自体にも言えることである。
教育の問題に関しても、私たちは働いて、節約してお金を貯め、子供に教育を与え、大学に送っている。
ところが、統計によって、我が国の主要な起業家のなかで大学の卒業生である者はごくわずかしかいないことが分かった。
個人的な成功、地域の成功、国家の成功は、人間の魂のなかに存在する誠実さ、信念、勤勉、兄弟愛、好奇心のような基礎で決まるのである。
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繁栄の条件
ロジャー・W・バブソン 著
住友 進 訳
きこ書房
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