
アルカトラズ(※)に、一人の終身刑犯がいた。
すべての世界が彼からは遮断されていた。
空虚で暗澹とした日が1日1日と過ぎていき、
彼は空をとぶ鳥の群れを窓越しに眺めるばかりだった。
ある朝、一羽のケガをした雀がたまたま独房に入ってきた。
彼は、その鳥を看病して元気にしてやった。
彼にとってそれは、単なる一羽の雀ではなく、
特別な存在になった。
他の囚人、看守、訪問者も彼のところへ鳥を持ってくるようになり、
彼はしだいに鳥について多くのことを知るようになった。
やがて独房のなかに本格的な飼育場がおかれ、
彼はますます専門的な知識と技術を深めていき、
ついには鳥類の病気に関する著名な権威となった。
こういった研究を彼はまったく独学でしたのである。
独房のなかで40年余りの歳月をぼんやりと虚しく送る代わりに、
アルカトラズの鳥類学者は、
退屈というものが、自由と同じように、
心の持ち方しだいであることを発見した。
なにかしら新しく学ぶものがかならず存在しているのだ。
彼は、絶対的な地獄ともなりえた環境を、
少なくとも魅力的な煉獄に変えたのである。
※アルカトラズ
(サンフランシスコの小島。かつて連邦刑務所があった)
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出典
[心はマインド…]
エレン ランガー 著
フォー ユー より
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