
格闘技の選手は、手足に重りなどをつけてトレーニングをする。
マラソン選手は、わざわざ空気の薄い高地に出向いてトレーニングをする。
なぜ、わざわざ重りをつけたり、空気の薄いところでトレーニングをするかというと、それだけ自分に負荷をかけることができ、トレーニング効果もグンと高くなるからである。
重りがなければ練習もラクであろうし、空気が薄くないほうが練習はしやすいであろう。
けれども、そういう“ぬるま湯状態”にいたら、結局は、自分を鍛えることができない。
自分を追い詰め、苛酷な環境に置かないと、人は強くなれないのである。
自分にハンデを課す、というのはいいことだ。
たとえハンデがなくとも、そういうときには自分で意識して、ハンデを課したほうがいい。
「卓球日本」の名が世界にとどろいたのは、萩村伊智朗の登場によってであった。
彼は、昭和29年、ロンドンの世界選手権で優勝すると、以来、8回連続して世界選手権に出場、金メダル計12個を獲得して、世界を仰天させた。
なぜ萩村は、それほど強かったのか。
その理由は、せりあいに強くなるため、練習では心の中で自分にハンデを課していたからである。
練習のとき、萩村は、0-5から数えたという。
自分が負けている状態をイメージし、そういうハンデがあるという設定で練習していたせいで、「せりあいに強く、逆転力のある勝負師」と呼ばれるようになったのである。
仕事をするときには、あえて自分にハンデをかけよう。
たとえば、「金曜日までに片づけてほしい」とお願いされた仕事は、自分の心の中でさらに2日のハンデを課して、「水曜日までには終わらせてやる!」という気持ちで取り組むのだ。
「1日5件の営業回り」が会社のノルマなのだとしたら、やはり自分にハンデを課して「1日15件」の訪問先を回るようにするのだ。
「ただでさえ、やる気がないのに、そんなことはできませんよ」と思うかもしれないが、そうではない。
みなさんがやる気にならないのは、自分を甘やかしているからである。
ラクなところで生きているから、やる気も出ないのだ。
自分にハンデを課して、厳しい状況に追い込めば、「これはいかん!」と思ってやる気が出てくる。
人間というのは、追い込まれれば、だれだってやる気になるのだ。
ノルマや締切が比較的ラクだったら、どうなるか。
当然、追い込まれるまでやる気にならないだろう。
だから、わざと自分の心の中でハンデを課し、自分を追い込むのである。
そうすれば、やる気も出てくる。
チューリッヒ大学のコーネリウス・コーニングは、締切直前になってやる気が高まる現象を「デッドライン・ラッシュ」と呼んでいる。
だれでも締切直前にはやる気が出るのだから、わざと締め切りを前倒しで設定すれば、いつでもやる気は引き出されるのだ。
『自分を「やる気」にさせる!最強の心理テクニック』ぱる出版
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