
あるとき大山さんは疑問に思います。
雇用している障がいを持つ方々は、福祉施設にいれば楽に過ごせるのに、なぜ工場で働こうとするのか?
満員電車に揺られながら出勤し、工場では一生懸命に仕事に励む。
しかし、ときには大山さんの業務指示が受け入れられず、作業に支障をきたすこともあった。
そのとき、「施設に返すよ」と言うと、泣いて嫌がったという。
思案にくれていたとき、法要で訪れた禅寺で、たまたま住職にその問いかけをしたところ、次のような答えが返ってきた。
「人間の幸せはものやお金ではありません。
人間の究極の幸せは次の四つです。
人に愛されること。
人にほめられること。
人の役にたつこと。
そして、人から必要とされること。
愛されること以外の三つの幸せは、働くことによって得られます。
少女たちが会社で働きたいと願うのは、ほんとうの幸せを求める人間としての証しですよ」
大山さんはその言葉を聞いて、胸のつかえがとれた感じがした。
「家や施設で保護されているだけでは、その喜びは感じることがなかなかできない。
会社が人に幸せをもたらせられるのなら、障がい者たちにもその『働く幸せ』を提供したい。
そう思ったんです」
以来、大山さんは、障がい者雇用を積極的に行うことになった。
引用:「DANA(ダーナ)」
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