石黒浩「肉体労働は全部機械に代わる」

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石黒浩 いいため話
画像:www.hotpepper.jp

今後、肉体労働は全部機械に任せられるようになります。

知的労働であっても、法律も医学も全部人口知能に変わります。

ただ、「自らを知ろうとする」という部分だけは、AI(人工知能)がすぐに取って変わることはできません。

変わるとしても、長い年月が必要だと思います。

これは、人間とその他の動物との決定的な違いでもあります。

医学分野はそのほとんどがAIとロボットに変わります。

法学も、工学も取って変わられますが、教育だけ残ります。

教育は最も難しい分野だからです。

もちろん、教育の現場では新しいメディアが盛んに使われるようになるし、AIやロボットがどんどん入ってくるでしょう。

現在の教師の役目は、チューター(学習の助言や補助を行う人)のような存在に近づいていくと予想されます。

しかし、教育プログラム自体を企画するのは難しい。

「人に何を教えればいいのか」「どうやって興味を持たせればいいのか」といった問題は極めて複雑で、簡単に自動化できないのです。

少なくとも医学や法学に比べて自動化が難しい分野だと断言できます。

語弊を恐れずに言うならば、医師は新しいことをやってはいけない存在です(大学の研究者は除きます)。

たとえば新しい薬を、「効果がありそうだから、あの患者さんに使ってみよう」というわけにはいきません。

失敗が許されないからです。

となると、仕事は決まりに沿ったルーティンワークになります。

それは工場のラインで働く人と、本質的にはとても近い。

いわば、すごく優秀な職人が、病院と呼ばれる、あまり自動化されていない工場で働いているようなものなのです。

つまり医師たちも、非常に性能がいいという条件があるものの、やはり「肉体マシーン」なのです。

AIの進化によって、彼らは職場を追われるか、給与がみるみるうちに落ちていくかもしれない。

そんな危機感を持っている医師は少なくありません。

対して「人はどうやったら成長するのか」「人はどう導くと、何を考え、何をしたいと思うようになるのだろう」といった問いに直面する教育は、まさにこれからの重要性が増す分野です。

教育を別の言葉に言い換えるとしたら、「人間プログラミング」です。

ロボットのプログラミングは僕たちの研究分野の一つですが、人間のある役割だけを引っ張りだして、こちらの思い通りに動かしているわけで、対人間に比べればはるかに単純です。

逆に言えば、教育はまだまだ解明できていない「人間それ自体」をプログラミングするわけですから、最も高度なチャレンジです。

ありとあらゆる知識を総動員して、研究をすすめるべき分野なのです。

『枠を壊して自分を生きる。』三笠書房