
色々言わなくても、自発的に人がついてくる男がいる。
「この人のためなら」と人を勝手に熱くさせる男がいる。
こんなリーダーが率いた組織は本当に強い。そして美しい。
その姿を目の当たりにさせてくれたのは、とある社長との出会いだった。
この会社は、社長の天才的な商才もあって、小規模ながらもときに大手と張り合えるくらいの成長を見せていた。
その社長の元には10名ほどの古参スタッフがいて、社長の目となり、手となって我武者羅に働いていた。
とはいえど、その部下たちは、最初は決して突出した才能の持ち主ではなく、どちらかというと「どこにでもいる社員」たちだったという。
ある日僕は、生意気で不躾な質問であることは承知で、こう尋ねてみた。
「社長、よその会社から優秀な人材をスカウトしたりしないんですか?」
「ん?そんなことは考えてないよ。なんで?」
「いえ、会社の勢いがるうちに経営のプロを何人かヘッドハンティングしてきて、脇を固めたほうがいいんじゃないですか?会社を大きくするためにはそういった決断もときに必要かと思うんですが・・・・」
一息置いて、社長はこう言った。
「うん。たしかにそれもひとつの方法だね。ただね、永松くん。その優秀と言われる人を引っ張ってくるということは、それなりの立場を準備することになるよね」
「はあ、確かにそうですね」
「でもね、それでは何十年も俺についてきてくれた彼らに、新参者が頭を下げさせるということになる。
そんなことは絶対にさせたくないんだよ。
そんなことをするくらいなら、僕はいまいるメンバーで大手とどうやって戦えるかを考える。
このメンバーで行けるところまで行けば、僕は幸せなんだよ」
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いい男論
永松 茂久 著
クロスメディア・パブリッシング
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