
「船を浮かべる水も、沈める水も一つ」
一つの水を限りなく船の中へとりこんでゆくと、船を沈没させてしまいます。
同じ水を、船の外へ汲み出すと、船を浮かべ、おし進める水へと変わります。
ちょうどそのように、人間の欲がイコール悪ではありません。
欲は天地から授かった大切な命のエネルギーです。
そのことに気づかず、小さな自我の、ああしたい、こうしたい、たいたいという欲望のほうに向けたとき煩悩となります。
お釈迦さまは、この煩悩の方向に向けてしまった欲に対して小欲・知足を説き、あるいは煩悩の炎にたとえて消せとか断てと説かれます。
「火について焼けず、火にそむいて凍えず、よく火を利用するごとく、人、欲を修道のほうに向けよ」と古人は説いておられます。
火はいいものだとしがみつけば火傷をする。
火は恐ろしいと遠ざければ凍える。
そうではなく上手に火を利用するように、人々よ、欲を道を修める方向へ、向上へと向けよ、というのです。
_______
泥があるから、花は咲く
青山 俊董 著
幻冬舎より
![]() |