
私たち普通の人間は弱者である。
弱者が強者に勝つには、どうしたらいいのだろうか。
それを教えてくれるのが、あの有名な「一寸法師(いっすんぼうし)」のオトギ話である。
一寸法師は、力のない小さな弱者。
赤鬼はこわい大きな強者。
両者が対決すれば当然、赤鬼が勝つに決まっている。
ところが、あの話はそれが逆になっている。
どうして、弱者の一寸法師が強者の赤鬼を退治できたのか。
この理由を説明するには、次の実験をしてみることが一番だ。
家にある大きな金づちを持ってくる。
その金づちで足の裏をたたいてみる。
ちっとも痛くない。
むしろ気持ちがいいくらいだ。
次に小さな針を持ってきて、やはり足の裏を刺してみる。
今度はチクリと痛みを感じる。
この動作を続けられたら耐えられない。
それこそ逃げ出したくなるだろう。
もうおわかりだろう。
この実験は針の一刺し、すなわち一点集中の威力を物語っている。
小さな針の先はまさに一点。
その一点に、たとえ弱い力でも集中すると、赤鬼が飛びあがらんばかりの痛みが生ずる。
先が広い金づちではできないことである。
この一寸法師の教訓を、私たちの人生に生かしたい。
強い者の間に挟まれて生活しなければならない弱い人間は、まず、自分の得意とする分野に全力を集中して、
その分野にしぼってがんばり通すことだ。
必ずそのうちに一点集中の効果が出てきて、弱者でも生きていける場が確保できるものだ。
引用:『成功する考え方』こう書房
田中真澄 著
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