
「お金というのは経済を回していくための道具に過ぎません」
「今後、さらに紙幣や硬貨は電子マネー化し、どんどん便利に、同時に実体がなかなかつかめないものになっていくでしょう」
「お金そのものも進化しているのです。だから、使う人間も知識で武装し、便利な道具として使いこなしていけばいいのです」
これは僕が昔、著書『お金はいつも正しい』で述べた言葉だ。
この本が出たのは2011年。
7年ほど前から、僕はすでに仮想通貨の基本的な解釈を、世に問うていたのだ。
先見の明を自慢したいわけではない。
お金の本質を正しく理解して、真っ当にビジネスをしていれば、自ずと確立できる普通の考え方だ。
なのに当時から、正しく理解している人があまりにも少なかったのは、不思議でならなかった。
近年、仮想通貨ブームである。
「億り人」なる、新興富裕層の出現や、人気タレントの参入などで、広く世間に知られるものとなった。
それによって硬貨や紙幣の示す効力が、以前ほどの強さではなくなってきている(まだ最強には違いないが)。
「お金とは単なる信用を数値化した道具であり、中央集権国家の管理下でなくとも、人々の知恵で使い方を創造できる」という、僕が訴え続けていた事実が、ようやく一般的なところまで理解されるようになってきた。
それ自体は嬉しいと思う。
しかし、仮想通貨を新たな儲け話としか認識していない人たちも、かなりいるようだ。
そう思いたければそれでもいいが、結局はまだみんなお金の不安から解放されていない。
仮想通貨は、貯金や投資にとって代わる画期的な財テク術ではない。
儲かる、儲からないの考え方で捉えていると、本質を見失う。
仮想通貨は、僕たちの“これから”の未来を豊かな方向へデザインする、テクノロジーのひとつだ。
このテクノロジーは自走式であり、進化と成熟の行く先は、まだ誰にもわからない。
従来型の貨幣については有用性のパターンは出尽くしたようだけど、仮想通貨に関しては未知数だ。
仮想通貨の浸透は、お金の正体を社会全体へ問いかけている。
さらなる一般化で、古い市場観が覆され、数え切れないほど多様な経済圏の出現が実現されるのではないか。
そうなると、人々を管理する国にとっては困るかもしれないが、非常に面白い。
僕たちは本当の意味で、お金の不安、ひいては何者かにマインドを縛られる生き方から、開放される転換点を迎えているのだ。
勘違いしてほしくはないが、僕はお金が役割を終えると言いたいわけではない。
お金はお金で、みんなまだ使い続けるだろう。
けれど、お金の役割とは何なのか?
国家の仕切る経済圏は、終わりつつあるんではないか?
という大きな問いかけが、テクノロジーを通して、世に投げかけられている。
『これからを稼ごう』徳間書店
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