チャンスがあれば主導権を奪取しろ

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主導権

高齢化社会と成長との関係性について考えるうえで、非常に示唆的だなと思ったエピソードがあります。

私のベンチャーファイナンスの先生である、斉藤惇(あつし)さんとお話ししたときに、聞いた話です。

斉藤さんは野村證券の副社長、東京証券取引所の社長などを歴任された辣腕の実業家で、年齢は70代後半。

彼は、こんなふうに言っていました。

「私は40代のころ、自分が前に出ようとしたら先輩たちから止められた。

『君はまだ若いから、年長者を立てなさい。

そのうち順番が回ってきたら、主導権を握れるから』

というのが、先輩たちの言い分でした。

そういうものかと思って順番を譲り、待っていてどうなったか。

いま私は70代ですが、まだ80代のみなさんがお元気で現役として残っています(笑)。

藤野君、これが高齢化社会というものですよ。

待っていても順番は回ってこない。

だから、チャンスがあれば主導権を奪取しなさい」

70代になってなお先輩が君臨する社会。

考えただけでぞっとしますね。

言ってみれば体育会系の部活で先輩にしごかれて、「1年ガマンすれば3年生が出て行く」と思ってがんばったのに、何年経っても先輩たちは出て行かない…そんな状況です。

このような現象は、一部の特殊な業界だけで起きていることではありません。

多くの身近な場所…例えば会社で、似たような風景が繰り広げられています。

最近でいうと、住宅大手の積水ハウスのトップ交代で、ドタバタ騒ぎがありました。

また、少し古い例ですが、ダントツに象徴的だったのが、セブン・イレブンの持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文氏(現・名誉顧問)が、会長から退くことを表明した記者会見です。

一部始終を見ていて、私は何度ものけぞりそうになりました。

「日本を代表する小売業のトップ交代の場だというのに、こんなにも幼稚な会話が交わされるなんて…」驚きながらも、日本の大企業の現場で起きている高齢化の闇がいかに深いか、その片鱗(へんりん)を見た気がしました。

この会見時点で、鈴木氏は83歳でした。

稀代の経営者に対して、あまりにステレオタイプな表現で気が引けますが、私の頭には「老害」という言葉しか浮かびませんでした。

やはり私が懸念している通り、日本の高齢化問題は「みんなの成長」を邪魔しているみたいです。

上の世代がいつまで経っても重要ポストに居座り、企業をはじめあらゆる場所で新陳代謝が起きにくくなっている。

その結果、若い人たちが力を発揮する場所が一向に増えず、社会に新しい価値観が根付かない。

時代が変化しつつあるのに、旧来型の発想から抜け出せず、成長の芽が摘まれてしまう…。

私はこの社会現象を「GG資本主義」と名付けました。

GGが、何かって…?

もうおわかりでしょう(笑)。

私は何も、高齢者の方々を悪く言うつもりはありません。

問題は、GG資本主義という「構造」なのです。

GG資本主義によって成長が阻害されているという現状に不安を抱いているのであり、誰が経済を握ろうとしても、みんなちゃんと成長できれば、それでいい。

しかし、そうなっていないからこそ、あえて言いづらいことを言い、警鐘を鳴らそうとしているのです。

『さらば、GG資本主義』光文社新書