南アフリカの北ナタール族の人々は、毎日「私はあなたを見ています」と言ってあいさつします。
相手は「私はここにいます」と応じます。
こうした人々の間では、人は誰かが見るまで存在しません。
あなたが相手を見ることで、相手を存在させるのです。
まさに「あなたが私を見るから、私は存在するようになり、私はここにいる」というあいさつのとおりです。
この部族の人々は、出会う人全員から直接自分の存在を確認してもらいながら、日々生活しています。
人に見られることで自分が存在しているのです。
ある日、いつも通っているスポーツクラブでチェックアウトを済ませた私を、受付スタッフの一人が追いかけてきました。
私は少し驚いて、何か忘れ物でもしたのかと思いました。
ところが、彼は私に追いつくと、近々転職するのでお別れのあいさつをしたかったのだと言います。
私は驚きました。
彼が受付で働いていた1年間、彼とは一度も会話したことがありません。
入っていくときに笑顔で「こんにちは」とあいさつし、出ていくときに「ありがとう」と言う以外、私は何もしていません。
それにもかかわらず、「いつも親切に接してくださったので、お礼が言いたかったんです。あなたがクラブに来られるたびに、僕は幸せな気持ちになりました」と彼は言うのです。
特別なことは何もしていないのに、とそのときは思いました。
しかし、その翌週、他の会員がチェックインやチェックアウトのときにどうしているのかを注目してみると、受付スタッフがそこにいないかのように振る舞う人がほとんどであることがわかりました。
ボソボソとつぶやくだけの人もいれば、何も言わず、目も合わせずにメンバーカードとロッカーの鍵を放り投げる人もいます。
どうりで彼が私の後を追ってくるわけです。
『まわりにいい影響をあたえる人がうまくいく』ディスカヴァー
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