吉本 ばなな 「おとなになるってどんなこと?」

考え方 いいため話
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まず、歳上の人は偉いと簡単に思ってしまうと、いろいろなことがうんと楽になります。

とりあえずひとつでも年が上なら、いちおう礼儀正しくふるまい、どんどんおごってもらいましょう(笑)。

そして歳下の人たちにはおごってあげましょう。

私はその文化がわりと好きなので、変えなくてもいいと思い、自分では採用しています。

でも人それぞれ好みがあると思うので、自分の属しているグループ内で調整してください。

私は、おばさんになったらおしゃれもしなくなるし、体型も崩れるし、あつかましくなるし、

声も大きくなるし、豹柄(ひょうがら)など着るようになり、人生は終わってしまうのではないかと思っていました。

でも、そんなことはなく(一部そうなっているのは否めないけど…特に豹柄と体型)、自分のことが自分でよくわかるようになるから、どんどん楽になっていくのです。

行きたくないレストランも、飲みたくない飲み物も、着たくない服もわかってくるし、もっと言うと会いたくない人もわかってくる。

そうすると自分で自分の人生を創造することができるようになる。

だいたいよく考えてみたらわかると思うんだけれど、子どもってちっとも自由なんかじゃないです。

基本的に親と学校の枠のなかで考えなくっちゃいけないのだし、経済的にちっとも自由がない。

暮らし方も選べないし、友だちも知っている範囲で見つけるしかない。

今からあの時代に戻れと言われたら冗談じゃないと思うと思う。

あふれるエネルギーがその不自由さを補っているだけで、ちっとも楽でも自由でもない。

それでも若いころの自分の写真を見ると、しみじみと思うのです。

なんてきれいな体の線、なんという元気さ、回復力、体力!

この頃にしかできないことをもとやっておけばよかった、と。

この頃の自分はそんなことを知らず、先になればなにかもっといいことがあるはずだと思って、いろいろなことを制限していたのです。

もっとビキニを着たり、派手な化粧をしたり、バカ食いしたりすればよかった。

けっこうしてたけど、もっともっと。

そして、はっと気づくのです。

そうか、あと十年か二十年後の私が見たら、三十年後に生きているとして健康でなかったりしたら、今の私に対して、全く同じことを思うに違いないんだ!と。

だから、今できることは目一杯。

それが未来の自分自身からのいちばんだいじなメッセージだと思います。

そのことをほんとうに理解することが、大人になるっていうことかもしれません。

引用:おとなになるってどんなこと?
吉本 ばなな 著
ちくまプリマー新書