あなたは人生の締め切りを意識していますか??

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死 いいため話
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アナトール・ブロイヤードさんという評論家が『癌とわわむれて』(晶文社)という本を書いています。

ブロイヤードさんは、前立腺がんになり、わかったときには全身の骨に転移していました。

それが1989年8月のこと。

彼は、1990年に70歳で亡くなりますが、その間にたくさんの文章を書いています。

それをまとめたのが、『癌とたわむれて』という本です。

とてもウイットに富んだものの見方が私は好きで、患者さんにもおすすめしています。

ブロイヤードさんは、全身の骨転移がわかったとき、「ときめいた」と言っています。

なぜ、ときめいたのか。

これがなかなかしゃれています。

「わが人生にも締め切りが設けられた」

というわけです。

彼は優秀な評論家でしたから、いつも締め切りに追われていました。

締め切りがあるからこそ、いい原稿が書けるということも知っていたと思います。

自分ががんとわかったとき、それを人生の締め切りととらえた感性には感服します。

締め切りのない人生は、どうしてもだらだらと怠惰になってしまいます。

締め切りが設けられた瞬間に、ぴしっと気持ちも締まります。

締め切りまでに何をしようかと、真剣に考えます。

今までは躊躇(ちゅうちょ)していたことでも、思い切って行動できるでしょう。

人生が一気に充実するのです。

長生きすることがばかりが求められますが、大事なのは、生きた長さではなく、どう生きたかです。

私の大好きな夏目漱石は49歳で亡くなっています。

正岡子規は35歳。

早すぎる死だといわれる年齢です。

しかし、彼らは、長くは生きられなかったけれども、とても充実した生を生きたはずです。

本当にすばらしい仕事をし旅立っていきました。

まさに、常に締め切りを感じながら、今を力いっぱい生きたのではないでしょうか。

江戸時代の禅僧、白隠禅師は弟子たちに向かって、こう問いかけています。

「古だぬきが古い巣の中で眠っているような生き方でいいのか」

どきっとしますね。

私は、何年か前から、一日一日を人生の締め切りとして生きるようになりました。

いつも、今日が最後の一日です。

そのつもりで生きると、一瞬一瞬が輝いてきます。

食事もおいしくありがたくいただけます。

会う人会う人がいとおしくなってきます。

人生には間違いなく締め切りがあります。

それを意識するかしないかで、人生の充実度はまるっきり違ってくるのではないでしょうか。

引用:粋な生き方
帯津良一 著
幻冬舎ルネッサンス