
私は、この世で最も神秘的で不思議な力を秘めているものは「言葉」だと思います。
「言葉」は、人間だけが持ちうるものです。
ほかのどんな生き物も、持ってはいません。
確かに鳥や獣は、鳴き声や吠え声で多少は意思が通じ合っているようにも見える。
けれども、そんなものは、ごくごく単純で本能的なものにすぎないでしょう。
唯一、人間だけが「言葉」を用いることによって、どんなに複雑な論理でも、どんなに細かな心理でも、
どんなに深遠な哲理でも、それを詳らかに伝え合うことができる。
さらには、それだけではありません。
「言葉」は紙に書き記すことができる。
書き記された「言葉」は、はるか彼方の遠方にいる他者へも、その内容を伝えられます。
さらに、自分が死んでなお後世の人々に、それを伝えることもできるのです。
まさに、「言葉」は時空を超越できます。
これを「神秘の力」と呼ばずして、何と呼ぶべきでしょう。
じつに言葉の力は無限なのです。
引用:志の見つけ方
佐藤一斎 著
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