
許すということは、損をすることなのかも知れないと思う。
だから、難しいのだ。
貰えるはずのものが貰えなかっただけでも、
「損した」と思うのに、こちらがそれを与えるなんて、
これでは、“ダブルの損”だと、私は思ったのである。
ところが、やがて気づかされたのは、
ダブルに損をすると、「得になる」ということだった。
“シングルの損”だけにしておくと、
残るのは、腹立たしさや口惜しさだけであり、
折りあらば仕返しをと考える自分だけである。
ところが思い切ってダブルに損をすると、
そこには、ほめてやりたい自分が残り、
「よかった」という満足感が残るから不思議だ。
しかし、ダブルの損をするのは、決して易しいことではない。
引用:目に見えないけれど大切なもの
渡辺和子 著
PHP研究所
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