
「五十にして四十九年の非を知る」という。
人生は常に反省なくしては、明日に生きられぬということだが、悲しいことに、自らの過ちを受け入れて正すことが、なかなかできないのが人間である。
何年たっても、自分だけが間違っていないように思い込んで、他を責めることを改めない。
商売をやっていると、だんだん新しい店が増えてくることが、まるで敵が攻めてくるように思えるものだ。
攻め手は悪者で、わが店のお客を盗みにきているように見える。
大型店やSCは、みな敵と思い、それらができなければ、お客は以前のようにみなわが店、わが商店街に来てくれると信じている。
だが、なぜお客が来なくなったかは、お客が決めたことで、新しい商業施設の方がお客にとって好ましかったからだけなのではないのか。
これほど簡単明瞭な論理はない。
「大黒柱に車をつけよ」とは、ジャスコ(旧岡田屋、現在イオン)の家訓だが、お客の求める場所に求める店を移すという、それだけの原則を実行しただけなのだ。
資本のあるなしよりも、小さな知恵が働けばできることを、何故やろうとしないのかが分かれ目になる。
引用:損得より先に善悪を考えよう
倉本長治 著
商業界
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