
勝は若年期から西洋に興味を持っていました。
そしてある日、古本屋でオランダの兵書を見つけます。
勝はそれを欲しがりますが、とても買うことができる値段ではありませんでした。
勝は親戚中を回り、お金を借りることを思いつきます。
そして何とか欲しがっていた本を買えるだけのお金が集まり、もう一度古本屋に立ち寄ります。
しかし、勝の求めていた本はすでに別の人の手に渡ってしまっていました。
勝はたいそう落ち込みました。
しかし、ここで諦める勝ではありません。
その本を買った持ち主を調べ始めるのです。
なんとかして持ち主を調べ上げ、その人と出会うことができました。
勝は何度も「その本を譲ってはいただけませんか」と頼み込みます。
それでも、なかなか了承を得ることはできません。
勝は続けて「それでは、あなたが寝ている間にその本を貸していただけませんか?あなたが寝ている間はその本を読むことができないでしょう」と言います。
持ち主は「それはそうですね。しかし、その本は大切なものです。家から持ち出されては困りますぞ」と答えます。
そこから、勝は持ち主の家まで毎夜通いつめるのです。
その距離は約六キロメートルも離れていたのですが、雨が降ろうとも約束の時間に遅れたことはありませんでした。
毎夜、家に通っては本を書き写していきます。
勝は約半年間通いつめ、その本八冊をついに写し終えました。
引用:日本の心は銅像にあった
渡部昇一 監修
丸岡慎弥 著
育鵬社
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