
自然の世界にはムダがない。
必ず、何かの意味がある。
例えば、森林で山火事が起きる。
人間の目から見ると、火事は困ったことだから消そうとする。
でも、消してはいけない山火事もあるのだ。
人間は長い間、その事実を知らなかった。
消す技術を進歩させる知恵は持っているが、
山火事の意義までは気づかなかったのである。
1988年、アメリカの西部イエローストーンで、
まれにみる大規模な山火事が発生した。
とても人力で消せるようなものではなかった。
原因は自然発火だった。
火事の後、さまざまな調査が行われた。
それまでこの地域で起きた自然発火による火災は、
森林管理官の努力によって、徹底的に抑えられてきた。
なぜ今度の火災を防げなかったのか。
調べているうち、意外な事実が浮かび上がってきた。
それは
「小規模な山火事を丹念に消したのがいけなかった」
ということだった。
火事を消してどこが悪い?普通に考えればそうなる。
だが森林の場合は、自然発火による小規模火災は起きた方がいいのである。
自然に起きる火災は樹木の世代交代を可能にする。
老木が燃えて若い木が育つ機会を与えてくれる。
それがないとどうなるか。
老木が若い木にとって代わられることがなくなり、
枯れ草や落ち葉ばかりが積もる。
その結果、森林全体が燃えやすい状態になってしまうのだ。
その状態で自然発火が起きると、大規模火災となり、森林全体を燃やしてしまう。
もし小規模火災を適当に起こさせておけば、
大規模火災は起きないというわけだ。
何においても、ガス抜きは必要ということだ。
引用:いつでも、逆に考えるとうまくいく。
川北 義則 著
PHP研究所
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