村上龍男「加茂水族館を救ったクラゲの話」

いいため話 水族館
画像:http://free-photos.gatag.net/

仕事において大きな成果を残す人間は、万事において楽観的なところがある。

逆に仕事のできない人間は、成果があがらないと、置かれた環境の不備を嘆くばかりで、いたずらに悲観的になる傾向があるものだ。

「ピンチはチャンス」

「災い転じて福となす」

よくいわれることだが、そういえるためには、何よりも楽観的であること。

悲観的なスタンスの「ないものねだり」は、何の役にも立たない。

「加茂水族館」館長の村上龍男さんは、そんな楽観的な一人といえる。

この加茂水族館は、いま大人気。

2012年には、年間入場者数が過去最高の27万人を超え、一度来館した人が二度、三度とリピート訪問するほど。

いまでは、押しも押されもせぬ人気水族館の一つに数えられている。

だが、けっして順風満帆だったわけではない。

これまでに、何度となく閉館の危機に直面してきた。

開館当初こそ、それなりの人気を集めていた加茂水族館だが、次第に客足が遠のき、来館者数は激減した。

「あってもなくてもいい水族館」

いつしか、こんな不名誉な称号が与えられるようになった。

その後も入館者は減り続け、1996年には10万人割れにまで落ち込んだ。

村上さんは閉館も覚悟して、自身もホームレスを覚悟したという。

そんな水族館を救ったのは、意外な生物だった。

それは、予算がなくて安くもできる企画展として実施した「サンゴ展」に紛れ込んで入ってきた、小さなサカサクラゲ。

サンゴには見向きもしない来館者が、クラゲをじっと見つめる姿に村上さんはひらめいた。

クラゲの展示である。

たしかに、クラゲの動きは見ていても飽きない。

ふつう、クラゲは厄介者とされている。

だが、水族館側は低予算で展示ができ、手間もそれほどかからない。

ただ、寿命が数ヶ月とあまりにも短く、常設展示をするにはつねに新しいクラゲと入れ替える必要があった。

いちいち海に獲りに行っていたのでは、とうてい間に合わない。

そこで村上さんは、クラゲ研究所を設立し、施設内でクラゲの繁殖を行なうことにした。

そして、村上さんは加茂水族館すべてを、クラゲに特化した水族館にしたのである。

「毒を食らわば皿まで」ではないが、お土産から食事まで、すべてクラゲに関連づけることにした。

もう、徹底的にクラゲである。

お土産の大福や羊羹(ようかん)、店内のラーメンからアイスクリーム、そしてコーヒーなどなど。

これらの商品も話題を呼び、加茂水族館は、どん底から、クラゲと同じようにゆっくりと浮上したのだ。

危機や困難を前にして楽天的であることは、仕事ではもちろん、人生においても大切なことだ。

一流の人間はそれを知っている。

加茂水族館では35種類以上のさまざまなクラゲが展示され、悠々と泳ぎ回っている。

ギネス・ワールド・レコーズ社も、このクラゲ水族館を世界一に認定した。

引用:川北義則 著
『一流の働き方』アスコム