
作り話とも思えるが、こういう話がある。
昔、砂漠地帯のような水が非常に貴重な地域から来日した人が、ひねると水が出る蛇口を見て、土産にしたいと思ったという話だ。
井戸を掘っても掘ってもうすぐ枯れ、地域によっては水をくむため長い距離を歩いたり、村を移動したりしなければならないような人たちにとって、蛇口をひねれば水が出る様は魔法のようだったろう。
そしてその方は、蛇口こそがその魔法を実現せしめていると考え、蛇口を所望したのである。
しかし、実際には、蛇口をひねれば水がほとばしるのは、蛇口ゆえではない。
蛇口をひねれば水が出る仕組み、その背景にあるシステムが、蛇口から水を出さしめる。
それを知っているわれわれは、蛇口を土産にはしない。
ビジネスも同じだ。
蛇口をほしがってはいけない。
引用:「価値創造の思考法」
小阪 裕司 著
東洋経済より
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