
日本は「道(どう)」を尊ぶ国であり、日本人は「道」に生きる民族である。
日本には古来、剣道、柔道、相撲道などの武道や華道、茶道、書道などの芸道がある。
会社経営にも「経営道」という「道」があって然(しか)るべきであり、「経営道」を貫くことが、会社経営の正しいいき方である。
会社経営で成功するためには、「経営は心なり」という「経営道」を究めていくことが肝心だ。
幕末の剣聖といわれ勝海舟の師匠であった島田虎之助は、「剣は心なり、心正しからざれば、剣また正しからず。剣を学ばんと欲すれば、先ず心より学ぶべし」と「剣心一致」を剣道の目的と定め、剣道修行の心構えとしている。
この島田虎之助の言葉を経営に当てはめれば、「経営は心である。心が正しくなければ経営もまた正しくない。経営を学びたいと思えば、先ず心から学ぶべきである」ということになる。
経営の真髄は、正に「経心一致」ということになる。
「経営道」は、企業が経営と事業の場において、正しい心で正しいことを行い続けていく企業の歩むべき道である。
戦前設立され、戦後も存続、発展し続けてきた優良企業の中には「道義」を社是・社訓に掲げてきた立派な企業が沢山ある。
ここでは、キユーピーマヨネーズの事例を挙げておこう。
キユーピーマヨネーズが創業以来90年にわたってトップ・ランキングのシェアを確保してこれたのは、消費者のキユーピーに対する絶対的な信頼と高い評価によるものだと、私は思う。
その最大の原因は、私は、キユーピーが掲げる社是「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」と社訓「道義を重んずること」「創意工夫に努めること」「親を大切にする事」にあると思う。
創業者中島薫一郎(とういちろう)は、仕事に対する基本的な心構えについて、次のように述べている。
「志を同じくする人と業を楽しんで悦びをともにする、そこに仕事のやりがいがあると思います。
まず心がけなければならないのは、道義を重んずること。
つまり目先の損得ではなく、何が本当か、正しいかということを判断の基準にすることです。
ただ、それだけでは目的を実現することはできません。
そこで次ぎに大切なのは創意工夫です。
世の中は存外公平なものであり、もし公平でない結果が出たとすれば、道義を重んずることに問題があったか、創意工夫にかけていたからだと反省をしてみてください。
そうすれば必ず、公平な結果が出てくるはずです。
そして、もうひとつ、親孝行をしてください。
わが子を思う親の気持ちをありがたく感じ、それに報いようとする気持ちが親孝行です。
したがって親孝行のできる人とは、人の好意をありがたく感じ、それに報いようとすることのできる人です。
そういう人の周囲には、また好意をもって接してくれる人が集まり、その会社はおのずから発展するはずです」
成功する事業は、その企業の品位と経営者の品性によってもたらされるということをキユーピーの経営姿勢は如実に示している。
引用:井上昭正 著
『経営は道なり心なり』致知出版社
![]() |