【ビートたけし】昔の豊かさ・今の貧しさ「芸人の世界」

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最近の若い奴らは、ちょっとネタができるとすぐライブに出たり、テレビに出たりで下積みって経験がないからね。

それは手っ取り早くていいんだろうけど、なんだか芸に「味」みたいなもんがないって感じはあるよね。

下積みの頃に悶々としながら考えたことって、やっぱり後から効いてくるもんなんでさ。

考えようによっちゃ、今のタレント芸人のほうがよっぽどキツいんじゃないか。

ビンボーでどうしようもなくても、救ってくれる師匠や先輩がそばにいてくれないわけだからね。

よくよく考えてみると、オイラの若い頃は、特にひもじかったわけでもないんだよな。

飲み屋に行けば、なじみの客から「おう、焼酎でものましてやるよ」って奢ってもらえたしね。

今の世知辛い世の中じゃ、芸人をつかまえて一杯奢ろうなんてヤツはなかなかいないだろう。

昔は別に豊かだったわけじゃないけど、なんだかおおらかというか、悠長だったんだよな。

今は便利でいろんなものも売ってるし、食い物だって安いから小銭で腹一杯になれるけど、なんだか味がなくなったよね。

世の中が全部ジャンクになっちまってるって気がする。

新聞や週刊誌だってそうじゃねぇかな。

ドンドン売れなくなってくると、どっかで見たようなスキャンダルとか、ありがちな批判記事に頼りがちになるけど、そうなってくるとどの雑誌を見ても同じってことになっちまうわけでね。

即効性はなくても「読ませる記事」「味のあるページ」ってのが増えてこないとダメだよな。

まァ、どの業界でもそうだね。

世の中全体が回り道をすることを嫌がって、すぐに結果を求めるようになっちまったからさ。

アベノミクスの世の中に逆行するようだけど、もしかしたらニッポンを救うのは下積み制度の復活かもしれないぜ。

引用:ビートたけし 著
『ヒンシュクの達人』小学館新書