
《かけがえのない人間であるためには、人と違っていなければならない》
シャネルは生涯を通して、「ほかの人と自分を区別する」ことを意識し続け、「ほかの人と同じことをして安心する」人たちから遠く離れたところにいました。
「自分と自分以外の人との違い」について、「自分にできてほかの人にできないこと」について、また逆に、「ほかの人がいともたやすくこなしているのに自分にはできないこと」について、考えた人でした。
シャネルの成功の理由は、もちろんひとつではないけれど、「人と違っていること」に異常なほどのこだわりをもっていたことは、確かに成功の理由の根幹にあるでしょう。
シャネルが71歳でカムバックしたとき、同業者であるバレンシアガは「シャネルは永遠の爆弾だ」と言いましたが、この強烈な賛辞は「かけがえのない人間」でありたいと願い続けたシャネルを喜ばせたことでしょう。
《20歳の顔は自然がくれたもの。30歳の顔は、あなたの生活によって刻まれる。50歳の顔には、あなた自身の価値が表れる》
どのような生き方をしてきたか、どのような生き方をしているのか。
それは顔に表れる。
シャネルの有名な言葉のひとつです。
進歩した医療技術で、どんなに肌に張りを与えようとも、重力に逆らった施術をしようとも、あるいは写真で修整を加えても、「精神の老化」は隠せません。
《私はこれから起こることの側(そば)にいる人間でありたい》
シャネル63歳。
スイスでの隠遁生活に退屈していたころ、「まだ終わったわけじゃないわ」はほとんど口癖でした。
60歳を超えたシャネルの口から「はじめからすべてをやり直す準備はできている」と聞いた人々は、その不屈の精神、年齢をものともしない精神に圧倒されました。
モード界にカムバックしたのは、それから8年後のことでした。
『ココ・シャネルの言葉』だいわ文庫
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