知っているという幻想

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新聞 いいため話
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ベテランが精彩を欠くことが多いのは、環境が変化したせいでもある。

仕事の世界は、いま高い地位にいる人たちが新人だった頃とは比較にならないくらい複雑になっている。

3つの根本的な変化…大量化、迅速化、短期化が起き、どの変化にも、新しい働き方と新しい知性を必要とされるようになった。

《大量化》…増え続ける情報

インターネットとつながった世界に生きている人はみな実感しているように、私たちは日々、膨大な量のデータを浴びせられている。

世界に存在する情報の総量は、ほぼ1年半に2倍のペースで増えている。

《迅速化》…仕事のサイクルの加速

自動化される仕事が増え、生産性を向上させるツールが普及すればするほど、私たちは仕事を短時間で終わらせ、同じ時間で処理する仕事の量を増やせる。

いまや、財務報告書は四半期ごとではなく毎月作成できるようになった。

それどころか、毎日更新することもできるし、パソコンのモニターでつねにリアルタイムで表示することもできる。

《短期化》…知識の使い捨て

真理は不朽でも、知識は短命化が進んでいる。

新しい発見のペースは早まる一方だ。

知識が時代遅れになる割合は、1970年代にはすべての産業で推計年10%あまりだったが、2005年の研究では年に15%に上昇している。

別の研究によれば、テクノロジー産業ではこの割合が年30%に達しているという。

あらゆる産業にテクノロジーが浸透するにつれて、知識が古くなるペースは分野を問わずさらに加速していくだろう。

これからの時代に欠かせないのは、頭のなかに知識を蓄えておくことではなく、ほかの人たちの知識を利用できることだ。

卓越したリーダーや抜きん出て早いペースでものごとを学べる人たちは、みんな知識をうまく利用する方法を知っている。

ビジネス戦略の専門家であるジェニファー・サートルの言葉を借りれば「知識経済では、水源であることより、水路であることのほうが重要」なのだ。

このような変化に疲弊して、過去を懐かしむ人もなかにはいるだろう。

新しいことを学ばず、とり残されてしまう人もいるだろう。

あるいは、有用な知識をもっているふりをする人もいるかもしれない。

しかし、物理学者のスティーブン・ホーキングは言っている。

「知識に対する最大の敵は、無知ではない。知っているという幻想だ」

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