
外国語を習得する秘訣は、とにかく声に出して音読することだ、とよくいわれます。
これは、はっきり口で発音することによって、その響きが五感を通して脳に伝わり、言葉の意味やニュアンスまでまるごと脳に刻みこまれるからです。
“体で覚える”とは、まさにこのことなのです。
目読だけでは、脳に刻みこまれる力が弱く、生きた言葉のセンスがなかなか身につかないわけです。
この「声に出すこと」は、外国語を学ぶときだけでなく、運をつかもうとする場合にも、ひじょうにだいじになってきます。
自分のほしい運がはっきりしたら、ことあるごとに「私はこういう運がほしい」と口に出してみるのです。
人に話してもいいし、人に話すのが恥ずかしかったら、自分一人でいるときに言ってみる。
とにかく、実際に言葉にし、声に出してみることです。
近ごろよく、大脳生理学の面から、胎児教育ということがいわれています。
胎児は成長しはじめて間もなく聴覚が発達し始めるので、母親や父親がやさしく話しかけたり、いい音楽を聞かせてやると、感受性が豊かで頭のいい子に育つというわけです。
母親の胎内にいるときに、いつもやさしい言葉をかけてもらっていれば、おのずと柔和な相がつくられていき、逆に、たえず両親のケンカする声などを聞かされていると、目も眉もつりあがった相になって、この世に誕生してくることになるのです。
この脳相は、3歳から10歳くらいまでのあいだに、明か暗かに分かれ、運のよし悪しを左右することになるのですが、たとえ幼少期に暗の相になってしまった人でも、成人してからでも、いくらでも明の相に変えることは可能です。
その方法の一つが、ほしい運や願望を口にすることで、脳にしっかりと、その願望を刻みこむことなのです。
これを続けていると、その言葉の“明”の面が脳相に刻まれ、顔の相や、ひいては行動までを運をつかむ“明”に変えるわけです。
私のこれまでの体験でも、一家が繁栄する“明”の家庭に共通していることは、毎朝の「おはよう」という挨拶がしっかりしていることです。
そこには、おのずと、今日もお互い明るく生きよう、という願いがこめられています。
家族のあいだで“明”を与えあっているともいえます。
企業も同じで、どんどん発展する会社では、かならず朝の挨拶がしっかりしています。
職場のみんなが“明”をもたらす言葉を口に出すことで、自然とその会社に運も近づいてくるのです。
スポーツの世界でも、個人競技にしろチーム競技にしろ、気合のはいった選手は、控え室などでひとりで精神を統一したあと、大きな声を出して「よし、やるぞ!」と気合を入れますが、こうした声がよく出て、しかもその声が大きい人やチームほど強いとよくいわれます。
これも、「勝つ」という願望をしっかりと自分に植えつけることで運を呼び込んでいるわけです。
ダスキンでは、毎日、全員が「損と得の道があるとすれば、損の道を歩もう…」と、大きな声で社訓を唱えています。
ダスキンにはいったばかりの人は、最初は驚き、大きな声で唱えるのを恥ずかしがったりするそうですが、そのうちに、自然と大きな声が出るようになるそうです。
これは、唱えることを強制された結果そうなるのではなく、大声で唱えることで、自分が変わり、明になっていくことを無意識のうちに感じとっているからでしょう。
こうして、そこで働く一人ひとりの人が明になっていけば、会社全体が明になり、運のつく会社にもなってきます。
『運のつくり方開き方』PHP文庫
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