男の嗜(たしな)み「モテる男のしぐさ」

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画像:http://free-photos.gatag.net/

先日、タクシーに乗っていたときのこと。

突然、急ブレーキがかかって、危く前のシートに頭をぶつけそうになった。

「すみません、大丈夫ですか。バイクがいきなり割り込んできたものですから。ああいうバイクは、ミラーの死角から急に出てくるので、ほんと困るんです」

運転手は、申し訳なさそうに謝った。

前方に目をやると、急ブレーキの原因をつくった大型バイクが、車列の間を左右へひらりひらりと出たり入ったりしながら、遠ざかっていくのが見えた。

それを見て、バイク乗りで知られる落語家の柳家小三治さんの言葉を思い出した。

「人の運転ぶりを見ていると、うまい人っていうのはうまそうに見えないね。

うわァ、すごいな、っていう走り方をしないのね。

狭いところをスパッと入ってね、下手すりゃ紙一重で危ないってところを、間一髪でクリアして、どうだ、すごいだろうなんて、そんな危ない運転を、本当にうまい人はしませんね。

スムースに流れるように、いつも安全なところを、それで速いっていう走り方ですね」

そういえば、先日乗ったタクシーの運転手は、スタートも停車も実にスムーズで、それでいて出すべきところでスピードを出す。

カーブもきれいに曲がる。

思わず「運転手さん、運転うまいね」と話しかけ、「何かやっていたの?」と聞いたところ、以前はレーサーだったとか。

道理でと納得したものだ。

車の運転でも、たいしてうまくもないのに、人さまの迷惑も考えず、これ見よがしに自分の走りをひけらかすのはみっともない。

そんなのは粋がった野暮天のすることで、本当にうまい人は私が経験したように、一見、何でもない走りなのに実はすごいという運転をする。

決してひけらかさない。

これは、およそすべての趣味全般、嗜み事に通じる話で、少しかじった程度のことを通ぶって話すのはみっともないし、いくらその道に詳しいからといっても、それをこれ見よがしにひけらかし、自慢されたら、誰だっていい気はしない。

引用:川北義則 著
『男の嗜(たしな)み』PHP研究所