
筆者は東京工業大学に在職中、しばしば学生に、「氷が溶けたら何になる?」と問いかけたものだった。
すると、学生は子供に聞くような質問はしないでくれと言わんばかりの顔をして、「水ですよ」と言う。
また別の学生に「氷が溶けたら何になる?」「水です」。
さすがは東京工業大学である。
誰に聞いても「水です」「水です」と答え、他の答えを出す学生は一人もいない。
(中略)
それにしても、よくもよくもまあ、日本中「氷が溶けると水になる」と教え込んだものだと思う。
もちろん答えは「水になる」で間違いではないのだが、大学生になったのだから、一つ覚え的に、水になる、水になるとばかり答えないで、
「氷が溶けると春になる」
ぐらいのことを言ったらどうなんだ、と思うくらいだった。
引用:「退歩を学べ」
森 政弘 著
アーユスの森新書
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