残酷すぎる成功法則

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成功 いいため話
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“幸福学研究のゴッドファーザー”として知られるオランダの社会学者、ルート・フェーンホーヴェンは「世界幸福データベース」を主宰している。

同氏が幸福度の見地からすべての国を精査したところ、最も幸せからほど遠い国になったのがモルドバだった。

元ソ連に属していたほとんど無名の国が、この疑わしくも不名誉な地位を得た根拠は何か?

モルドバ人はたがいをまったく信用しないということだ。

モルドバ人の生活ほぼすべての面で信頼が欠如している。

作家のエリック・ワイナーによると、あまりに多くの学生が教師に賄賂を渡して試験に合格するので、国民は、三五歳以下の医者にはかかろうとしない。医師免許も金で買っていると考えられるからだ。

ワイナーは、モルドバ人の意識を一言で表した――「私の知ったことではない」。

この国で、集団の利益のために人びとを一致団結させることはとうてい不可能だ。

誰も、他者の利益になるようなことをしようとしない。

信頼感、協調心の欠如は、この国を利己主義のブラックホールに変えてしまったのだ。

周りの者が信頼できないという考えは、自己達成的予言になるとの研究結果がある。

あなたは皆がいんちきをすると仮定し、人を信じるのをやめる。その後は努力をしなくなり、ひたすら下方スパイラルに入る。

仕事のチームに悪い従業員がたった一人いるだけで、チーム全体の業績が三〇~四〇%低下するという。

たしかに個人的なごまかしは利益をもたらすかもしれない。

しかし、ほかの人もごまかすようになるのは時間の問題だ。

そして誰もが泣きを見ることになる。詰まるところモルドバのような利己主義な文化が構築され、公共の利益に貢献する人びとからもたらされるはずの価値が微塵もない状況になる。

モルドバの調査を行ったフェーンホーヴェンは言う。

「社会の中であなたが置かれている場所より、社会の質のほうが重要だ」

その理由を、ミシガン大学政治学教授のロバート・アクセルロッドがいみじくも説明している。

「利己的な人は、初めは成功しそうに見える。しかし長い目でみれば、彼らが成功するために必要とする環境そのものを破壊しかねないのだ」

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残酷すぎる成功法則

エリック・バーカー 著

橘玲 監訳

竹中てる実 訳

飛鳥新社