
斜視を治して起きた変化
18歳の時から39年間、斜視を抱えて生きてきた私は57歳にして手術を受けた。
いままで大きく外側に向いていた左目がまっすぐ前に向くようになった。
そのおかげで、私の中で大きな変化が起こった。
世の中を正面から素直に見つめることができるようになったのである。
私はマスコミという世界に長くいて、常に世の中を斜めに見ることばかりをしてきた。
それがマスコミというものだと思ってきた。
ましてや私は斜視。
文字どおり世の中を斜めに見ることにかけては誰にも負けないという自負があった。
ところが斜視を治して、世の中をまっすぐに見てみると、ものごとを素直に見ることの大切さがよくわかった。
マスコミに限らず、日本人は欠点を見抜くのが非常に得意な国民だ。
その反面、人の長所を認めてそれを評価し、伸ばしてあげるのが苦手なのだ。
たとえば、最近、私は斎藤佑樹の両親が書いた「佑樹」という本を読んだ。
素晴らしい本だった。
しかし、日本の社会には、こういう本が出ると「親がノコノコ出ていって、あれこれ語るのはいかがなものか」と批判的な人が必ずいる。
だったら、一度、あの本を読んでみるといい。
斎藤佑樹という人間があの場所にいるのは、この両親がいたからこそだと思い知るはずだ。
それほど、書かれている内容は深い。
それも知らずに「あんな本を出す親なんて・・」
といってる人には、子供を立派に育てることができないんじゃないか。
あれこれ批判する前に、素直に向き合って、まっすぐに評価してあげたらどうだろう。
私は人の欠点を見抜く天才になんかなりたくない。
人の長所を見抜く天才でいたい。
24歳のときから演出の仕事をしてきた私は、世の中を斜めに見ようと思えばいくらでも見られる。
鋭くえぐるように。
しかし、斜視を治したことによって、まともに正面から素直な心で見ることもできるようになった。
引用:テリー伊藤の天才ノート
テリー伊藤 著
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