
■芥川龍之介に「人生には嘘(うそ)でしか語れない真実がある」という言葉があります。
人間は嘘を言うことも必要で、その時には、うまく嘘をつかなくてはいけないし、嘘というものがわからなければいけない。
こういう考え方は非常にヨーロッパ的であって、嘘を言わないことを第一の徳としてきたアメリカ人には受け入れられません。
その点で、日本人とヨーロッパ人の思考は共通しているところがあります。
だってわが日本には“嘘から出たマコト”という深い洞察を表す格言すらあるんですから。
第一、そのほうがずっと優雅でしょう。
■年をとるということは、自分の可能性を絞っていくことです。
男も女も。
可能性を絞るというのは、可能性の限界を知るということではありません。
集中すべき的を、あくまで絞り込むんです。
■若い人が優しくあれるはずがないんです。
あらゆることが可能だと思っている年頃には、高慢とか不遜(ふそん)であるほうが似合っています。
優しさとは“人生には不可能なことがある”と知っている大人だけのものです。
優しさは哀しさでもあり、ここに至った時はじめて、人間は成熟したといえるのではないでしょうか。
■本当に男でいることは、ちょっと恥ずかしいことなんです。
男には、自分の生き方に対する恥じらいというものがある。
だからその恥じらいを意識すると、自然に静かな男になる。
ひとつのことをずっと静かにやっていくような生き方になるはずです。
『千年語録』小学館
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