
大聖国師・古岳は、武士の血を受けた気骨ある人だった。
死出の旅立ちに臨んで述べた最後のことば(遺偈・ゆいげ)は、いかにも峻烈(しゅんれつ)なその人柄を反映するかのように、気概にみちあふれている。
人生は、旅のようなものだという。
「旅」という文字は、古くは、旗の下に集まった多くの人をあらわす文字であったと聞く。
つまり、多くの人が集まっているのが旅だ。
古代では、人々が遠くへ行くとき、集団で移動したので、そこから旅の意味になったのだという。
旅とは、大勢の人々と、行動を共にすることである。
人生は、常に、多くの人と接し、多くの人と喜怒哀楽を共にしながら生きてゆくことである。
しかし、決して和して同じない。
他人に迎合せず、自分が自分であることを、はっきりと見つめながら生きていく。
自分が、自分の本質に目覚めることを自覚という。
自分が自分に目覚めれば、他人の中の自己に対してもまた、同じように目覚める。
旅は道連れという。
旅の中で、人がそれぞれ、自己に目覚めるところに、旅の楽しさはいちだんと増す。
そして、最後は一人で道を歩む。
これが、一人旅である。
『心配するな、なんとかなる』PHP研究所
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