【実話から学ぶ】小林正観さん「もったいないお店の作り方」

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画像:http://free-photos.gatag.net/

ある有名観光地で、蕎麦屋に入りました。

雨の日の昼時、店の中は、4人掛けのテーブルが4つほどと、小上がりの座敷に4人用座卓が4つ。

満員になれば30名ほどが入れる蕎麦屋です。

中はすでに20人ほどの客がいました。

食べている人が半分、待っている人が半分ほどです。

店に入って、不思議な気がしました。

シーンとしているのです。

誰も何も話をしていない。

店中に会話がないのです。

普通は、20人も人がいると結構店内がワーンとしているものですが、シーンとしていました。

私のほうは4人連れでした。

テーブル席が空いていないので小上がりに上がり、座卓に着きました。

私をこの店に案内した人が、メニューを私に差し出しながら、小さな声で言いました。

「どう思います?」

メニューを見て、驚きました。

書き取ったわけではないので、完全にそのとおりの言葉ではありません。

ただ、趣旨は以下のようなものでした。

「ここは蕎麦屋であって、喫茶店ではありません。

お喋りをしたい人は喫茶店に行ってください。

食べ終わったらすぐに席を空けてください。

食べ終わっての無駄なお喋りはお断りします」

「店とトラブルが生じた場合は、正規料金の5割増しの料金をいただきます。

トラブルによって生じた問題はすべて、御客様の責任とします」

多分、皆、このメニューを見て、これ以上ないというほどの「不快」を味わったに違いありません。

この蕎麦屋に、過去に嫌な客が来たことは間違いありません。

食べ終わったにもかかわらず長話をし、次の客が待っているのに談笑し続けていた客がいたのでしょう。

それで頭に来て、そういう客を排除するための「断り書き」を作った…。

そこまでは理解できます。

ただ、そういう嫌な客と、善良で常識的な普通の客とでは、後者のほうが圧倒的に多いはずです。

1000人のうち、店の人が我慢できないほど長居をする客は、10人いるかいないかでしょう。

10人の嫌な客向けの“敵意”と“憎しみ”を、ほかの善良な990人に向けてしまったのです。

1%の「嫌な客」向けの「断り書き」を、残りの99%の「温かい客」「普通の善良な客」に対して用意してしまった。

もったいない、と私は思いました。

どんなにおいしい蕎麦を出しても、これでは二度と客は来ない。

1%の(一事)のために、99%(万事)を敵にしてくってかかっている、というのが、この店の姿です。

「一事が万事」に似せて言うなら、「一事で万事(一事で万事を決めてしまうこと)」です。

ちょっとした小さな出来事(嫌なこと)をもとに、社会すべてに対して、恨み、憎しみ、呪ってしまう…。

そういう敵意にあふれた態度を、温かい人や親切な人にも日常的に示している…。

そういう損なことはやめたほうがいいと思います。

電話に必ず不機嫌に出る人がいました。

不機嫌に「はい」というだけで、それ以上何も言わずに黙って、名前も名乗らない。

「どうしてそんなに不機嫌に電話に出るの?」と聞いたことがあります。

その答えは、「よくいたずら電話がかかるんです」とのことでした。

どのくらいの頻度でいたずら電話があるのかを聞いてみたら、その答えは、「1年に1度か、2度」というものでした。

「その1年に1度か2度のいたずら電話のために、ほかのすべての友人の電話に対して、そういう不機嫌な出方をするんですか」と、驚いたものでした。

彼にはいろいろな仕事を頼んでいたのですが、電話をするたびに“不快”な応対をされるものですから、結果としてしだいに疎遠になりました。

引用:小林正観 著
『神さまに好かれる話』五月書房