松浦弥太郎『暮しの手帖』編集長の仕事術

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僕が経営する古書店カウブックスの大切な仕事は掃除です。

6年前に開店した時から、スタッフにはことあるごとに「見えないところをきれいにしよう」と言い続けています。

30分あればひととおりの掃除はできるようなスペースを、毎日2時間かけて掃除する。

これをばかばかしいと思う人もいるようです。

毎日掃除しているのですから、磨く場所が見つからないほどきれいなのです。

ほとんどのスタッフが、「毎朝、無意味なことをやらされている」と感じているようでした。

ところが、そのなかの数人は楽しそうに掃除をするということに、僕はやがて気づきました。

その一人にたずねてみると、こんな言葉が返ってきました。

毎日やると決めたのだから、「大変だ」とか「なんの意味があるんだろう」などと考えず、楽しんで掃除をしようと決めた。

すると、毎日磨いている積み重ねが自信になって、お客さまに胸を張って「いらっしゃいませ」と言えるようになった…。

彼らの答えを聞いたとき、秀でた人かそうでないかは、与えられた仕事を楽しめるかどうかの違いなんだな、と感じました。

僕が掃除を徹底している理由も、彼らの答えと似ています。

カウブックスというこれまでなかった古書店を始めるとき、経営や接客のすべてが手探りで、自信をもてるところが何一つありませんでした。

そこで僕は、自分たちが今いる場所を大切にしていれば、ささやかでも確実な自信になると思ったのです。

「すみずみまで毎日掃除している」という努力の事実があれば、小さくても誇れるものができると。

それは今でも続いており、『暮しの手帖』でも僕は同じことをしています。

一生懸命に磨き、整理整頓し、毎日掃除を続ける。

これを守っていれば、ごくたまに小さな埃が見つかるとしても、よくある失敗ですみます。

「ええっ、その棚は見られたくないな」という部分がまるでないだけで、堂々と振る舞えます。

毎朝の掃除で、きよらかさをつくりだせば、誰でも強くなれるのです。

「きれいなところを、もっときれいにすることは、一つの創造です」

引用:松浦弥太郎 著
『今日もていねいに。』PHP文庫