
「人に勝つ者は力有り。自らに勝つ者は強し」
と『老子』(第33章)はいう。
他人と争ってこれを打ち負かす者は力があるといえるが、本当の強者ではない。
私欲私情を克服できる者、すなわち私心に打ち勝つことができる者こそ、真の強者である、ということである。
王陽明もまた、同じようなことをいっている。
「山中の賊を破るのは易しく、心中の賊を破るのは難し」
克己(こっき)は古来、聖賢が目指した道である。
思えば、天は人間にだけ克己という心を発達させた。
その心があることによって、人間の進歩向上はある。
そのことを我々は肝に銘じたいものである。
最後に、新井正明氏(住友生命保険元名誉会長)の言葉を紹介する。
「暗いところばかり見つめている人間は、
暗い運命を招き寄せることになるし、
いつも明るく明るくと考えている人間は
おそらく運命からも愛され、
明るく幸せな人生を送ることができるだろう」
「自らに勝つ」ことに腐心してきた人の尊い言葉である。
『プロの条件』致知出版社
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