小林正観 「こころの遊歩道」

小林正観 いいため話
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中村天風(てんぷう)という人がいました。

この方は、自分でガンを克服した人で、「心というものをきちんとコントロールすれば、ガンをも克服することができる」と唱えました。

その教えを受けた人というのは、政治家や財界など、日本の指導者の、かなり多くの部分に及んだと言われています。

あるとき、その天風先生が、ある女性からこう言われたそうです。

「先生にお会いしてから、私は運が開け、いろいろなことがとても良くなりました。

おかげさまで、ありがとうございます」と。

そのときに、天風先生が考えたことは、

「自分に出会ったことで、運が良くなったと言われて悪い気はしない。

けれども、そういう考え方なら、自分に会ったために運が悪くなったと思う人もいるかもしれない。

私は『天風先生に会ったおかげで、自分でものを考え、判断できるようになりました』と言ってもらえる方が嬉しい」

ということでした。

私も、全くその通りだと思いました。

ある人の話を聞いて、「自分の感性にピッタリくる。だから、この人にいろいろなことを相談しよう」と思うのはいいのです。

しかし、それが、細かいことから何もかも、すべて相談して決めるようになってしまうと、それは少し違うと言わざるをえません。

本来は、その人(自分の感性に合う人)の考え方や哲学、主義、信条、思想の中から、自分が共鳴できるところを学びとり、自分の考え方を作り上げ、

自分で全てのことを理解し、判断し、処理できるようになる。

ということが、一番の理想なのです。

あるところに自他ともに認める“名家”がありましたが、その家族は、ある占い師にとても依存していたのだそうです。

財産の運用や不動産の問題から、子供の結婚相手のことなど、全てにわたって、その占い師にお伺いを立て、言われた通りにしていました。

ところが、あるとき気がついてみると、家の財産の全てが、その占い師に横領されていたのだそうです。

いろいろな人の話を聞いたり、教えを受けたりするのはいいことです。

それによって自分が触発され、様々なことに気がつく、ということは、非常に重要なことです。

しかし、本来自分が判断しなければならないことまでも、その人に依存し、判断してもらい、結論を出してもらうというのは、アドバイスしている側の人間からしても決して望ましいことではありません。

たくさんの人の意見を聞く、謙虚である、と同時に、最終的には自分で判断するということが、必要であると思います。

引用:こころの遊歩道
小林正観 著
イースト・プレス