
余命一年と宣告された高校生の女子と、その秘密を一人だけ知っている男子のお話しです。
「残り少ない命を、図書室の片づけなんか に使っていいの?」
僕の極めて何気ない質問に、彼女は首を傾げた。
「いいに決まってるじゃん」
「決まってはいないと思うよ」
「そう?じゃあ他に何をしろって言うの?」
「そりゃあ、初恋の人に会いにいくとか、外国でヒッチハイクをして最期の場所を決めるとか、やりたいことがあるんじゃないの?」
彼女は反対方向に首を傾げた。
「んー、言いたいことは分かんなくもないけどさ。例えば、【秘密を知っているクラスメイト】くんにも、死ぬまでにやりたいことはあるでしょう?」
「・・・・・なくはない、かな」
「でも今、それをやってないじゃん。
私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ。
そういう意味では私も君も変わんないよ、きっと。
一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。
私は今日、楽しかったよ」
「・・・・・なるほどね」
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引用:「君の膵臓をたべたい」
住野よる 著
双葉社より
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