
今の暮らしでもそうでしょうが、江戸の時代でも目は口ほどにモノを言い、わけても、「ありがとう」の感謝の気持ちは、自ずと目に表れ、その心が伝わるというものです。
誰かに世話になったとき、ありがとうの言葉以上に、気持ちが伝わると言われているのが、『感謝の目つき』です。
とくに年下の者や使用人など、頼みやすかったり、当然のように言いつけやすい人に、何かをしてもらったときなどに、「ありがとう」と言葉に出さなくても、目で感謝の気持ちを表す(表情)と、相手も嬉しい気持ちになるものです。
店の主人やまとめ役の人など、どんなに偉い人でも何かをしてもらったときに、横柄な態度のままで、やってくれるのは当たり前の当たり前、という顔をしていると、その人は最低とされました。
江戸の町では、初めての町へ行ったときなども、「みなさまの道を通らせていただく」という気持ちで、すれ違う人に『感謝の目つき』をしたといいます。
これを力のある商人ほど心がけていたのです。
で、この心構えがあれば気持ちのよい人間関係が築ける、それは間違いなしでした。
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思いやりの心 江戸しぐさ
池田 葉子(著, 編集, イラスト)越川 禮子(監修)
マガジンハウス
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