
馬車の車輪は、三〇本のスポークが車軸から出て輪になっている。
中央の車軸を通す穴、「空間」があるからこそ、車輪は車輪として働くことができる。
粘土をこねて器を作るとしよう。
器の中に「からっぽ」の空間があるからこそ、そこに物を入れるという役割が生まれる。
家を建てる様子を思い出してみよう。
壁に戸や窓の穴を開け、その奥に空間を作る。
そこに「からっぽ」の空間があるからこそ、部屋としての用途が生まれる。
そこが物で溢れていたら、部屋として使い物にならない。
人は、形あるものばかりに囚われがちになるけど、すべての「形有るもの」が役に立つのは、「形無き空間」が、それを支えているからなんだ。
そもそも「空間」のないところには、何も存在することができない。
君の心も、部屋と同じようなものなんだ。
心の中が「自分の解釈」でパンパンになっていたら、他者の気持ちなど入りようがない。
やれ知識だ教養だといって積み上げてきた、その「知っている」というお荷物によって、ますます心は狭くなり、他を受け入れる許容性を失ってしまう。
心をからっぽにすることで、そこに「ゆとり」や「受容(愛)」という、僕たちに本来備わっている働きが活かされてくるんだ。
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ラブ、安堵、ピース
黒澤 一樹 著
アウルズ・エージェンシー
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